レム睡眠の「レム」ってどんな意味?
人間は幼児期以降において睡眠段階に、ノンレム睡眠段階とレム睡眠段階が現れます。
なお、レム睡眠のレムとは「Rapid Eye Movements(略してREMs)=急速眼球運動」のことで、REMsが現れる睡眠をレム睡眠、レム睡眠ではない睡眠をノンレム睡眠と呼ぶようになりました。
この記事ではレム睡眠とノンレム睡眠の違いについて、詳しくご紹介させていただきます。ご参考いただけますと幸いです。
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目次
ノンレム睡眠・レム睡眠とは?
人間の睡眠は、
- 行動睡眠
- 生理的(脳波)睡眠
の2つの側面から定義されていて、レム・ノンレム睡眠は「生理的(脳波)睡眠」において説明されます。
行動睡眠の目的
まず、行動睡眠に関しては、いわゆる「寝床で眠る」といった行動様式の睡眠のことを言います。
行動睡眠の目的はエネルギー消費を節約し、食物を十分に摂取できない状況を回避することです。行動睡眠は動物として進化の過程で獲得してきました。
生理的(脳波)睡眠の目的
次に、生理的(脳波)睡眠は、脳波・眼球運動・筋電図の電気生理学的指標によって定義されたものです。主にノンレム睡眠・レム睡眠に区別されます。
生理的(脳波)睡眠の目的は主に大脳を管理(保全・活性化)することです。
生理的(脳波)睡眠がみられるのは、鳥類と哺乳類に限られ、動物の大脳の発達に伴って獲得した睡眠と考えられています。
ノンレム睡眠・レム睡眠の違いは?
ノンレム睡眠・レム睡眠では大脳の管理の仕方が異なります。
単純に言うと、ノンレム睡眠は大脳を保全(修復)、レムは活性化(情報の再編成)が主な役割です。
ノンレム睡眠の特徴
ノンレム睡眠は徐波(じょは)睡眠と言われ、ゆっくりとした眼球運動と骨格筋活動の低下などが特徴。基本的には入眠後最初に現れるのはノンレム睡眠です。
ノンレム睡眠には、浅い睡眠から深い睡眠まで4つの段階があり、厳密には深い睡眠段階(stage 3,4)をまとめて徐波睡眠と呼びます。
大脳機能の保全が主な役割で、深部体温(脳音)の低下、脳活動の低下が見られます。睡眠時間全体における出現割合はおよそ75~80%です。
レム睡眠の特徴
レム睡眠は、覚醒に近い状態の脳波や、急速眼球運動(REMs)の出現、骨格筋の消失などが特徴。基本的には入眠後、ノンレム睡眠が深い段階に達してから数十分後にレム睡眠が現れます。
大脳が活性化させ、情報の再編成や、脳の整備点検が主な役割で、脳血流が増大し、意識水準が高くなります。睡眠時間全体における出現割合はおよそ20~25%です。
ノンレム睡眠とレム睡眠の比較
ノンレム睡眠 | レム睡眠 | |
---|---|---|
役割 | 大脳機能の保全 | 情報の再編成 脳の点検整備 |
大脳活動 | 全体的に低い | 部分的に高い |
脳血流 | 減少傾向 | 増大傾向 |
眼球運動 | ゆるやか | 急速(REMs) |
筋緊張 | 低下 | 消失、突発的な痙攣 |
出現割合 | 75~80% | 20~25% |
なお、ノンレム睡眠の「大脳の保全」、レム睡眠の「骨格筋の消失」という特徴から「ノンレム睡眠は脳の眠り、レム睡眠は体の眠り」と紹介されていることもあります。
しかし、どちらも脳の眠りですし、体のメンテナンスに必要な成長ホルモンの分泌は睡眠初期のノンレム睡眠に効率的に行われるので、こうした説明は正しくはありません。
睡眠の段階と経過
一般的な覚醒ー睡眠サイクルでは、入眠後、ノンレム睡眠(4段階)を経て、レム睡眠が出現します。
そして、ノンレム睡眠開始からレム睡眠終了までを1周期として、一晩で3~6回程度を繰り返し、次第にノンレム睡眠の平均的な段階が浅くなることで主睡眠が終わり、覚醒に至ります。
若年成人の正常睡眠では深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が睡眠時間全体の前半に多く出現し、睡眠後半では浅いノンレム睡眠(Stage 1,2)とレム睡眠の出現量が増える傾向があります。
なお、寝返りなどの体動は、徐波睡眠の終了時やレム睡眠の前後・およびレム睡眠中に起きやすいと言われています。
また、どのタイミングが目覚めやすいか?という点で言えば、大きな体動が出現しやすいタイミング(レム睡眠前後など)や、ごく浅いノンレム睡眠(Stage 1)の段階が眠気が少なく目覚めが良いと考えられています。
夢を見るのはレム睡眠?ノンレム睡眠?
夢の定義を「眠ったときに見る鮮明な映像とストーリーがある幻覚」(いわゆる「夢」)とするなら、レム睡眠時に見られることが多く、夢再生率はレム睡眠で約80%、ノンレム睡眠で約20%と言われています。(ただし、ごく些細な認知や知覚活動も含めるとノンレム睡眠での再生率も増えます)
レム睡眠と夢との関係は、解明には至っていませんが、レム睡眠時の急速眼球運動の前後に、偏桃体(情動)・海馬(記憶)・視覚連合野(イメージ化)が活動的になると示唆されています。
つまり、レム睡眠時には眼球運動の直前に情動・記憶の興奮が起こり、その後、統合化されたイメージ(視覚心象)をもとに夢となるという仮説が有力とされています。
昼夜逆転生活は危険?レム睡眠との関係
睡眠に関する体のメカニズムのうち、深部体温(脳や臓器などの体の内部の体温)の変化とレム睡眠の発生時期は、実際の生活に関係なく、ほぼ1日周期で繰り返す規則性を持っています(概日リズムと言います)。
つまり、昼夜逆転生活を送ってしまうと、深部体温やレム睡眠が、睡眠に適さない状態になり、安定した睡眠を実現しにくくなるでしょう。
たとえば、「眠気」は深部体温の変化によって影響を受けます。
眠気が最も強くなるのは深部体温が最低となる時間帯(4~5時頃)で、眠気が最も感じにくいのは深部体温が最高になった後の数時間(13~16時頃)です。
つまり、人間が本来的にもつ生活リズムにおいては、13時~16時は最も主睡眠に適さない時間帯なのです。
人間はあくまで昼に活動・夜に休息という「昼行性」の本能をもっているので、昼夜逆転の生活は心身への不調をきたしやすいと言えます。
睡眠負債を返済できる?ノンレム睡眠との関係
レム睡眠と違い、ノンレム睡眠は概日リズムの影響を受けません。ノンレム睡眠は実際の覚醒ー睡眠サイクルによって、影響を受けます。
つまり、寝る直前までの睡眠の過剰or不足の情報に基づいて、眠りの質と量が自動的に決められるという仕組みです。
こうしたことから、たとえば寝不足が続いたあとは、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)の量(時間)が増え、結果的に普段より少し長めに睡眠を取ることで過去の睡眠負債がある程度リカバリーできるのです。
しかし、こうした睡眠調節のしくみは、あくまで過去の情報(睡眠不足や睡眠過剰)に基づいた制御システムなので、未来に睡眠不足が予想されていたとしても前もって寝だめはできないのでご注意ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ノンレム睡眠とレム睡眠の特徴をご紹介させていただきました。
ノンレム睡眠は大脳の保全、レム睡眠は大脳を活性化させることが主な役割です。
睡眠は概日リズム(体内時計)の影響を少なからず受けます。
そして、人間は「昼行性」の生き物のため、昼夜逆転や夜更かし生活などを続けると睡眠の質に悪影響を及ぼし、結果的に心身の状態を崩す原因にもなるでしょう。
良質な睡眠を実現したいならベッドやマットレス選びも大切ですが、まずは規則正しい生活を心掛けることが大事です。
夜は0時前には寝床に入り、中途覚醒がなく朝は6~7時に起きるという生活を目指しましょう。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。