時計

睡眠時間、足りてますか?

睡眠コスト・睡眠負債など、睡眠の悩みに関するワードが取り上げられることが最近多いですよね。

この記事では以下のような疑問にお答えするので、ご参考いただけますと幸いです。

  • 健康に支障を生じない睡眠時間の量は?
  • 何時ごろに就寝するのが良い?
  • 正常な睡眠ってどんな状態?

この記事を書いた人

管理人の椚大輔椚 大輔(ベッド・マットレス専門家)
ベッドメーカーに勤務後、当サイトを開設。国内・海外メーカーへの取材を重ね、レビューしたベッド&マットレスは100商品を超える。2020年に株式会社悠デザインを設立し、ベッド関連に特化したサービスを展開。ベッド・マットレスの専門家としてTBS「ラヴィット!」、ビジネス誌「プレジデント」、楽天市場「マットレスの選び方」などの出演・監修も行う。

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必要とされる睡眠時間の量は?

成人の場合

男性と女性

米国の100万人以上の調査によると、成人における健康に支障を生じない睡眠時間は6.5~8時間未満とされ、日本での10万人以上の調査を含めると、最適な7時間程度とされています。

厚生労働省が実施した【平成30年 国民健康・栄養調査】によると実際の1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高い(男性34.5%・女性34.7%)という結果があります。

この結果を見ると概ね必要とされる睡眠時間を取得できている人が多そうですが、6時間未満の人の割合は、男性の30~50歳代、女性の40~60歳台では4割を超えているため、実際は睡眠が不足している成人がかなり多いと言えるでしょう。

子どもの場合(幼児・小学生・中学生・高校生など)

子ども

子どもは成人よりも多い睡眠時間が必要です。子どもが必要な睡眠時間は年代別で以下の通りとされています。

  • 3~5歳で11~13時間
  • 6歳~12歳で10~11時間
  • 11~17歳で8.5~9.25時間

なお、睡眠の不足によって記憶機能や学習の成績が低下するという悪影響は、大人はもちろんのこと、子どもの大脳の発達において特に問題視されているので、上記に挙げた睡眠時間を目安に規則正しい生活が望まれます。

ただし、小学生の成績では、学年に見合った適切な睡眠時間より逆に長すぎても成績が低下するという調査結果(広島県「基礎・基本」定着調査2005)があり、適切な睡眠時間にはある程度範囲があるとされています。

年代適切な睡眠時間
3~5歳11~13時間
6~12歳10~11時間
11~17歳8.5~9.25時間
成人6.5~8時間

睡眠時間は長い方が良い?短い方が良い?

睡眠

「健康のためには、1日に8時間の睡眠が必要」と考えている人も多いですが、その根拠となる証拠はほとんどないと言われています。

上でご紹介したとおり、成人で健康に支障を生じない睡眠時間は6.5時間~8時間程度とされていますが、睡眠時間にも個体差があり、短い眠りでも適切な睡眠の質を保てる「短眠者」がいたり、逆に長い睡眠が必要な「長眠者」もいます。

結論、短眠者と長眠者では睡眠機能的な差はほぼありません。詳しくご紹介すると以下の通りです。

まず、徐波睡眠(ノンレム睡眠による大脳保全作用)の出現量では、短眠者・長眠者において差はありません。

続いて、レム睡眠(大脳の活性化・情報の整理)においては長眠者の方が出現量が多いという結果がありますが、入眠後6時間で比較するとレム睡眠の出現量は短眠者の方が多く出現しているのに対して、長眠者では入眠後6時間以降で急激に増加することが示されています。

しかし、長眠者では睡眠潜時(寝床に入って眠りに落ちるまでの長さ)の延長や、中途覚醒回数の増加起床時の不快感などが報告されています。

短眠は効率的でおすすめ?

つまり、短眠者の睡眠は相対的にコンパクトにまとまっていると言えます。

そうした背景があり「睡眠時間を短縮して睡眠効率を高めよう」という目的で5時間を切るような超短時間睡眠法を提唱する説もあります。

しかし、健常成人での短眠者や長眠者の比率は極めて少なく、大多数の成人が必要する睡眠時間は7時間程度であるという知見が得られれていることから、超短時間睡眠法はリスクがあると言えます。

睡眠スタイル(短眠か、平均的か、長眠か)はそう簡単に変えられないので、自分に適した睡眠時間を確保する必要があります。

夜更かしは本当に良くない?朝型と夜型の違い

夜更かし

「早寝早起きの方が健康に良い」というイメージがありませんか?確かに規則正しい生活を送るのは大切ですが、早寝早起きが絶対的に良いというわけではありません。

いわゆる「宵っ張り」と呼ばれる夜更かしを習慣とする人もいますが、実は人によって体内時計のリズム(概日リズム)が異なることもあり、睡眠に関係する深部体温の変化や、ホルモン分泌のタイミングに個体差があるのです。

つまり、夜に調子が良い「夜型タイプ」と自覚がある人は、夜更かししても睡眠の質は「朝型タイプ(早寝早起きの人)」と、そう変わりません。

むしろ無理して早寝早起き(朝型化)の生活を送ってしまった方が、睡眠ー覚醒のリズムが崩れるので、不調をきたしてしまう可能性もあります。

自分が朝型か夜型か、自然と調子が良くなるリズムをよく考えましょう。

とはいっても、会社にお勤めだったり、子どもにお弁当を作らなければならない人などは、そうした外的要因のため、基本的に朝型の生活リズムを強いられることになるので、本来的に夜型人間は無理をする必要が出てきます。

昼夜逆転生活は危険?その理由

昼夜逆転の生活

早寝(朝型)・夜更かし(夜型)はどちらとも基本的に夜の時間帯に主睡眠を取る行動パターンですが、昼夜が逆転するような生活の場合はあきらかに睡眠に不調をきたす可能性が高くなります。

理由は、体内時計です。

人間には進化の過程で獲得した本能的な体内時計を持っています。この体内時計は「概日リズム」とも言います。

地球上のほとんどの生物には概日リズムが備わっていて、明るさや温度の変化に応じて、捕食・被捕食関係(狩りの機会・獲物になるリスク)に適応できるように、活動期と休息期がほぼ1日周期で繰り返されるようになっています。

そして、人間においては、昼に行動・夜に休息をする「昼行性」の概日リズムを持っていて、深部体温(脳や臓器などの温度)や一部のホルモン分泌は、昼行性の概日リズムにしたがって変化するようになっています。

自然な眠りの仕組みとは?

自然な睡眠は次のように進行します。

まず、夜になると深部体温が下がり始め、しばらくするとメラトニン(睡眠を制御するホルモン)の分泌量が増えていき、「夜になった」という情報が脳伝わることで自然と眠気を感じるようになります。

そして自然な眠気にもとづき入眠を開始し、深部体温はさらに低下、メラトニン分泌は増大し睡眠を安定させ、その後、コルチゾール(血糖値を安定させるホルモン)の分泌が始まり、深部体温が上昇を始め、やがて朝の目覚めを迎えます。

つまり、睡眠に関係がある深部体温やメラトニンやコルチゾールなどのホルモン分泌は概日リズムにしたがって変化していくため、昼夜逆転の生活になった場合、そうしたリズムを無視して主睡眠を取ることになるので、眠りの質に悪影響を及ぼしやすくなるのです。

しかたなく昼夜逆転の生活を送る必要がある人以外は、基本的には昼行性の生活パターンにすることが快適な睡眠に必要です。

正常な睡眠の目安とは?

睡眠

睡眠学的なアプローチで正常な睡眠内容をまとめると、たとえば以下のようになります。

  • 睡眠はノンレム睡眠から始まる
  • ノンレム睡眠とレム睡眠は約90分ごとに交代する
  • 徐波睡眠の出現は一晩の最初の1/3あたりで優先的に生じる
  • レム睡眠の出現は一晩の最後の1/3あたりで優先的に生じる
  • ノンレム睡眠:レム睡眠の割合は75~80%:20~25%(つまりノンレム睡眠の出現率が圧倒的に多い)

以上のような目安はあるのですが、専門的な機械などで計測したりしないと、なかなかわかりづらいです。

そこで、もう少し判断しやすい例として、睡眠中に以下のような症状があった場合、生活を見直してみることをおすすめします。

  • いびき
  • 歯ぎしり
  • 苦しそう(呼吸が止まるなど)
  • 寝つけない
  • 途中で起きる(中途覚醒が多い)

以上のような症状を自覚している場合、日中の精神的ストレスを感じていたり、不規則な生活を送っていることが原因の可能性があります。

日中の健康的・活動的な行動によって、夜の睡眠の質は良くなる場合が多く、逆に言うと日中に過度なストレスを受けたりや、昼寝のしすぎなど不健康・不規則な行動をしてしまうと、夜の主睡眠に悪影響がでるので注意が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

睡眠時間の理想や実態、生活パターンによる睡眠の質の違いなどをご紹介させていただきました。

短眠者・長眠者など、健康に支障を生じない睡眠時間は人によって異なりますが、ほぼ正規分布する(平均値が最も多い)とされます。

つまり、健康的な生活を送るための目安としては7時間前後の睡眠時間を確保したいところです。

また、朝型(早寝)・夜型(夜更かし)などの行動パターンの違いもありますが、自分が快適であれば、多少の夜更かしなどは問題ないとされます。

ただし、昼と夜が逆転するような生活の場合、人間が本能的にもっている体内時計がコントロールする体温や一部のホルモン分泌が睡眠に適さないような動き方をするので、基本的には昼行性(昼に活動・夜に休息)の生活パターンを送ることが推奨されます。

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。