ベッドメーカーに勤めていた筆者がシモンズを徹底解説
この記事では世界的に有名な老舗マットレスメーカー「シモンズ(SIMMONS)」の社員の方から聞いた話や、実際にマットレスに寝てみた体験をご紹介します。
筆者は過去ベッドメーカーに勤めていました。
ベッドの専門家の視点からシモンズの特徴やマットレスの選び方などを徹底解説するので、ご参考頂けますと幸いです。
今回はシモンズの東京ショールーム(シモンズギャラリー東京)にお邪魔し、シモンズ株式会社マーケティング部のご担当者様に詳しいお話を伺ってきました。
「シモンズのおすすめマットレスを早く知りたい」
とお考えの方は以下のボタンを押すとジャンプします。
この記事を書いた人
目次
シモンズとは
シモンズ(SIMMONS)は1870年創業した世界で最も老舗のマットレスメーカーです。
アメリカで誕生し、日本では1964年に米国本社の子会社として「シモンズ株式会社」が設立。現在では工業部品大手の株式会社ニフコの傘下に入り、シモンズとのライセンス契約のもとマットレス関連の製品を製造・販売しています。
高品質なポケットコイル
シモンズは世界で初めてポケットコイルマットレスの商業化に成功したメーカーとしても有名です。
1925年にポケットコイルマットレスの商業化に成功して以降、絶え間ない研究・改良を重ね、高品質なマットレスを作り続けてきました。
なお、シモンズのポケットコイルマットレスは「Beautyrest(ビューティレスト)」と言います。
米国では「シモンズ」より「Beautyrest(ビューティレスト)」という名称の方が有名とのことです。
日本国内で製造
日本市場におけるシモンズのマットレスは国内生産品で、静岡県の富士小山工場で製造されています。
さらに、富士小山工場で作られたマットレスはアジア諸国にも輸出していて、最大規模のポケットコイルマットレス工場と言えるでしょう。
なお、日本向けのマットレスは欧米向けとは仕様が異なり、日本人の寝姿勢に合った硬さや寝心地になっています(日本市場向けのマットレスは欧米向けよりも硬めです)。
ホテルの納入実績
シモンズのマットレスはホテルへの導入実績が豊富です。
ウエスティンホテルやザ・ペニンシュラ東京などのハイランクなホテルから、シティホテルまで数えきれないほどのホテルからシモンズは選ばれています。
ホテルにとって、マットレスの質は顧客満足度につながるため、慎重に選びます。
寝心地が良く耐久性が高いシモンズのマットレスはホテルにとって理想的な寝具であるという評価の結果でしょう。
なお、ホテルに導入されているマットレスは一般向けの製品とは仕様が異なります(ホテル向けの方がシンプルに作られている傾向があります)。
シモンズのこだわりは「ポケットコイル」
上記でも触れましたが、シモンズは創業初期よりずっとポケットコイルへのこだわりを貫いてきました。
ポケットコイルとは、コイルがひとつひとつ袋(ポケット)に入った構造で、独立した動きによって体の荷重にフィットし、自然で快適な寝姿勢を保てる特徴があります。振動が伝わりにくく、静かな寝心地のため二人で眠るのにも最適です。
以前はポケットコイルの製造・販売自体、シモンズに特許があり、シモンズでしか作れませんでしたが、現在では特許が切れ、他のメーカーでも作れるようになりました。
しかし、これだけ長い期間、ポケットコイルの研究・改良を進めてきたメーカーは他にありません。
現在のシモンズのポケットコイルのこだわりについて詳しくご紹介します。
大手国内製鉄メーカー製の超硬鋼線を使用
日本で製造するシモンズ製マットレスのポケットコイルで使われているバネの素材は国産大手製鉄メーカー製です。
国産のバネの素材(鋼線)は海外産に比べて不純物が少ないと言われ、耐久性が優れています。
さらに、ポケットコイルで使われているバネの素材は一般的には「硬鋼線(こうこうせん)」ですが、シモンズはより高品質なピアノ線と同等の「超硬鋼線」を使用しています。
なお、マットレスで使われる国産のバネ素材の約75%はシモンズのマットレスで使われているとのことです。
頑丈な袋(ポケット)
ポケットコイルマットレスのバネは圧縮されて袋(ポケット)につつまれます。よって、反発性があるバネが飛び出ないためにも袋には強度が必要です。
シモンズは袋の強度にもこだわりがあり、材料や縫い方、コイル同士を繋げる接着剤(ホットメルト)などが優れています。
頑丈なバネと、それをしっかりつつむ袋があるということが、シモンズのマットレスは耐久性が高いと評価される理由です。
配列の工夫
ポケットコイルは配列の仕方で寝心地が変わります。
主な配列方法は「並行配列」か「交互配列」のいずれかです。
それぞれの配列の特徴は以下の通りです。※下記画像はシモンズ製のマットレスではありません
並行配列 |
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交互配列 |
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シモンズのマットレスは「並行配列」です。
シモンズはポケットコイル(バネ)に圧倒的な自信があるため、あえてひとつひとつのコイルの動きを活かす並行配列にしています。
並行配列は高密度で作れないため、コイルひとつにかかる負荷が高く、耐久性が劣るという解釈もありますが、シモンズの高品質なポケットコイルであれば、耐久性は問題ありません。※配列の特徴は各メーカーによって見解がわかれるところです
他社との価格比較
「シモンズって価格がすごく高いんじゃない?」
と思っている人も多いかもしれませんが、スタンダードモデルは他の有名マットレスメーカーで比べるとそこまで差がありません。(やや高めではあります)
参考までに各社のスタンダードモデルとの価格比較をご紹介します。
メーカー | モデル | 価格 |
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シモンズ | ゴールデンバリュー | 192,500円~ |
サータ | ライトブリーズ 5.8(#08) | 176,000円~ |
シーリー | エッセンシャルズPT | 121,000円~ |
フランスベッド | LT-5500 | 191,400円~ |
日本ベッド | シルキーポケット | 176,000円~ |
シモンズのマットレスで使われているバネの品質や仕様を考えると妥当な価格であり、むしろコストパフォーマンスが良いとも言えるでしょう。
シモンズの選び方
シモンズ(ビューティレスト)のマットレスは大きく以下の3つのシリーズに分かれています。
ビューティレストシリーズす
- リュクス(最高級)
- プレミアム(基幹)
- セレクション(入門)
そして、シリーズの中で詰め物などやコイルによっていくつかのモデルがあります。
リュクス(最高級シリーズ)
シモンズの最上級シリーズ。コイルが2段になっている「コイルオンコイル」モデルもラインアップされていて、最高級モデルは80万円以上という価格設定。寝心地はかなりソフトで、ふんわりと体を預けることができます。しかし、平坦な体つきの人や、仰向きで寝るには沈み込みすぎるので、一般的な日本人体型には合いにくいでしょう。欧米人や横向き寝の人におすすめ。
プレミアム(基幹シリーズ)
シモンズで最も人気があるシリーズ。硬め~ふつうレベルの寝心地のモデルが豊富にラインアップされています。特にシモンズ永遠のスタンダードモデルと言われている「ゴールデンバリュー」が人気。迷ったらまずはゴールデンバリューから試してみることをおすすめします。
セレクション(入門シリーズ)
高価なマットレスの印象が強いシモンズが、「もっと気軽にシモンズの寝心地を体験してほしい」という思いのもと立ち上げたのが「Beautyrest Selection(ビューティレスト セレクション)」です。
シモンズ自慢のポケットコイルの仕様はそのままに、通常モデルから詰め物やカバーをややダウングレードさせ、価格が4~5万円ほど安くなっています。
例えば、人気モデルのゴールデンバリュー(シングルサイズ)の場合、
- 通常モデル:176,000円
- BSモデル:126,500円
と、約50,000円ほど安いです。
ダウングレードと聞くとマイナスに捉えてしまうかもしれませんが、逆に通常モデルがかなり豪華に作られているので、「シンプルになったモデル」と言った方が適切でしょう。
なお、Beautyrest Selectionは、どちらかというとホテルに納入しているマットレスに近い作りをしているため、「ホテルで寝たシモンズの寝心地が好き!」と言う人はむしろBeautyrest Selectionから選んだ方がイメージとのギャップが生まれにくいと思います。個人的にはおすすめです。
ショールームの歩き方
近くにショールームがある場合、ぜひ寝心地を試してみてください。
特に東京(有楽町)と、大阪のギャラリーでは「寝姿勢測定システム」が用意されています。
寝姿勢測定システムとは
寝姿勢測定システムとは、自分の寝姿勢(荷重や体圧分布)に基づいて、最適なマットレスを選ぶことが出来る機械のことです。「シモンズアジャスタブルメジャーベッド」と呼ばれています。
シモンズはこのシステムを信州大学と共同開発し、2018年10月のシモンズギャラリー東京オープン時に初めて導入され、今では他にシモンズギャラリー大阪や新宿高島屋、島忠ホームズ新山下店の売り場にも設置されています。
測定結果に基づいて、シモンズの代表的な4モデルのうちのいずれかに適しているか判断されます。そしてそこから寝心地の好みなどを加味し、最適なモデルを決めていくという流れです。
シモンズギャラリー東京で筆者が試してきましたので、ご参考ください。
このようにマットレスの上に寝てテスト開始。
計測が始まるとマットレスの硬さが変わります。
人によるかもしれませんが、筆者の場合は硬い寝心地からやわらかい寝心地にの4つのパターンの寝姿勢を計測しました。
こちらが寝姿勢の計測画面。ある硬さにおける自分の寝姿勢のラインを横から見た図です。
向かって左が頭で、右が脚です。
青いラインがテストしたマットレスの硬さにおける自分の寝姿勢です。
赤いラインが信州大学が導き出した理想的な寝姿勢です。
この場合、もっと沈み込んだほうが良い寝心地が得られるという診断になります。(つまり今テストしている硬さでは筆者の体型にしては硬すぎるという診断です)
こうした診断を4回行い、最終的に自分の寝姿勢に合ったシモンズのマットレスをご案内いただきます。
計測器による診断は10~15分くらいで終わります。
こちらが今回筆者の寝姿勢に最も適合した「ゴールデンバリュー ピロートップ」です。ゴールデンバリュー ピロートップは中間くらいの硬さで、たしかに自分にとって無理のない寝心地と感じました。
こうした具体的な分析によってマットレスを選べると失敗は少ないので安心ですね。
記事公開時では下記店舗で寝姿勢測定システムが導入されているので、お近くにある場合はぜひお試しいただくと良いと思います。
寝姿勢測定システムが置いてある店舗
なお、寝姿勢測定器の体験をギャラリーでご希望の方は、WEB予約(東京のみ)をご活用ください。満席になることも多いので事前に予約を取ることおすすめします。
迷ったらコレ!シモンズの人気・おすすめマットレス3選
シモンズの中で特に人気でおすすめのマットレスを3つご紹介します。迷ったらこのモデルを参考に選んでみてください。
1. ゴールデンバリュー
シモンズ永遠のスタンダードモデル
すでに何回も名前が出てきましたが、「シモンズ永遠のスタンダードモデル」と言われ、最も人気があるマットレスです。平均的な日本人体型によく合い、幅広い人に受け入れられる「やや硬め」の寝心地。シモンズのマットレスの入門編としてもおすすめです。
2. ゴールデンバリュー ピロートップ(Beautyrest Selection)
コスパで選ぶならコレ
ピロートップとは、マットレスの上にクッションがついてる仕様のこと。体圧分散性が優れ、やや柔らかい寝心地になります。ホテルに納入されているマットレスはピロートップタイプが多いです
Beautyrest Selectionのゴールデンバリュー ピロートップは、特にホテルに納入されているシモンズ製マットレスの寝心地に近い傾向があるので、「ホテルで寝たシモンズが気に入った!」と言う人におすすめです。
3. カスタムロイヤル
よりリッチ(ソフト)な寝心地
ゴールデンバリューよりもコイルの高さがあるモデル。よりクッション性に優れ、ソフトながらしっかりと体をサポートしてくれます。価格はやや高めですが、ゴールデンバリューのプレミアム仕様といった位置づけの贅沢な寝心地が特徴です。
シモンズのベッドフレーム
シモンズはマットレスのほかにベッドフレームも自社開発しています。
特徴としては「ダブルクッション」に力を入れていることです。
ダブルクッションとは
ダブルクッションのベッドフレームとは、ベッドフレームというよりもマットレスに近い構造で、ボックスの中にスプリング(バネ)が入った台のことです。「ボックススプリング」と呼ばれています。
マットレスをクッション性のあるボックススプリングの上に乗せることで、更に体圧分散性や荷重分散性を高め、寝心地やマットレスの耐久性を向上する効果があります。木製ベッドフレームよりも少し柔らかい寝心地になります。
ホテルのベッドはボックススプリングを使用して、ダブルクッションになっていることがほとんどです。
高級ホテルの寝心地を実現したい人は、ぜひボックススプリングをご検討ください。
シモンズの口コミ・評判は?
シモンズの口コミや評判を知りたい人にとって身もふたもない話になりますが、そもそもマットレスにおいては不特定多数の口コミを当てにしない方が賢明です。
理由は以下の通りです。
- 人によって合う寝心地はバラバラ
- 腰痛や肩こりの評価はあくまで「個人的」な体験談
マットレスにおける良し悪しの評価は、寝る人の体型や習慣、精神状態にまで影響があり、まさに千差万別です。
また、腰痛や肩こりの改善を目的としてマットレスを探すこともあると思いますが、腰痛・肩こりの原因も人それぞれで、それを改善できる寝心地もまたバラバラなので、お医者さんもあえてマットレスについて言及をしないことが多いと聞きます。
事前に自分に合った寝心地を調べたい人は、ショールームに行って試しましょう。
「体圧分散性」にも注意
同様にマットレスの販売ページや、口コミサイトでよく展開されている「体圧分散性」のセールスアピールも実はあまり参考になりません。
人によって快適に感じる体圧分散性はバラバラです。どのくらいの体圧分散性が理想的かという科学的なエビデンス(証拠)はありません。「体圧分散性が高い=良い」というわけではないのでご注意ください。
「シモンズの口コミ」が当てにならない理由
シモンズのように幅広いラインアップがあるマットレスメーカーの場合、モデルによって大きく寝心地が変わるので「シモンズの口コミ」としてひとくくりにして調べてしまうと誤解が生まれやすいです。
しっかりと口コミを見たいなら気になるモデル名(「ゴールデンバリュー」など)に絞って調べてみることがおすすめです。
しかし、上で書いた通り、人によって寝心地の感じ方はバラバラなので、あくまで参考程度に留めましょう。
要注意な口コミとは?
口コミは当てにならないとはいえ、マットレス選びにおいて絶対的に避けるべき口コミのキーワードもあります。以下の3つです。
- 底付き感がある
- バネあたりがある
- 「やわらかすぎる」が多数
底付き感とは?シモンズ製品はどう?
底付き感とは、寝たときに床の存在を感じることです。底付きがあるマットレスは荷重分散・体圧分散・寝姿勢保持といったマットレスの基本的な性能を十分に発揮できず、寝心地としては悪く感じます。
筆者が実際に体験したシモンズ製マットレスでは、底付きは感じませんでした。
バネ当たりとは?シモンズ製品はどう?
バネ当たりとは、寝たときにバネが体にあたる感覚があることです。バネ当たりがあるマットレスは、落ち着かない寝心地に感じます。またバネ自体に負荷がかかりやすいので、低品質なマットレスの場合、すぐにヘタる可能性があります。
筆者が実際に体験したシモンズ製マットレスでは、バネ当たりは感じませんでした。
「やわらかすぎる」が多いとなぜ注意が必要?シモンズ製品はどう?
硬さ・やわらかさは好みの問題なので、一概には言えないのですが、明らかに「やわらかすぎる」という口コミが多い場合は注意が必要です。
日本人の場合、平坦な体型で仰向き寝が多いため、沈み込みが少ない「硬めの寝心地」が合いやすい傾向があります。
(逆に欧米人は、体のラインがはっきりし、且つ横向き寝が多いため、やわらかい寝心地が合いやすいです)
つまり、あなたが標準的な日本人体型の場合、やわらかすぎると評価されているマットレスは体に合わない可能性が高いと思います。
シモンズを始め、有名マットレスメーカーのハイランクモデルはかなりソフトな寝心地が多いため、スタンダードモデルを基本として選ぶと失敗が少ないでしょう。
スタンダードモデルはその国でより幅広い層に受け入れられやすい硬さ・寝心地を考えて作られています。
なお、シモンズのスタンダードモデルは「ゴールデンバリュー」です。
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いかがでしたでしょうか。
世界的に有名なマットレスメーカー「シモンズ」の特徴やおすすめ商品をご紹介させていただきました。
シモンズはポケットコイルのパイオニアとして絶え間ない研究と改良を重ねて現在に至ります。
耐久性が高く、たくさんの高級ホテルにも選ばれています。
一般的なマットレスよりは高価ですが、快適な眠りは快適な人生につながります。
ぜひギャラリーで寝心地を確かめてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。