ポケットコイルの仕様を徹底解説
この記事では、ポケットコイルの仕様(線材・線径・密度・圧縮率など)をご紹介します。
販売ページなどで、
- 「SWRH 72 B C」という線材を使っています!
- 500個のコイルを敷き詰めた高密度仕様!
- 線径が太いからしっかり支えられます!
といった表現を見たことがある人もいるかと思います。
結論から言うと、仕様を分解して比較(アピール)しても、あまり意味はありません。マットレスは様々な素材をバランスよく統合させることで良い寝心地を作ります。
よって、仕様(線材・線径・密度など)そこまで気にしなくて大丈夫です。
しかしながら、仕様を理解することで、よりあなたに適したマットレスを選べる可能性は高まるので、ご興味がある人はぜひ参考にしてくださいね。
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ポケットコイルとは
ポケットコイルとは、バネを不織布(ポケット)に包んだコイルのことです。ポケットコイルを敷き詰めて作ったマットレスを「ポケットコイルマットレス」と言います。
そして、メーカーや商品によって、ポケットコイルの仕様が異なり、寝心地の違いを作ります。
ポケットコイルの主な仕様(7つ)
ポケットコイルマットレスの販売ページなどでは、以下のような紹介文を見かけることがあります。
『このマットレスはSWRH 82 B C という線材の線径1.8mmのバネを使用した高さ5.7インチのポケットコイルを交互配列で高密度に敷き詰めた商品です』
上のように仕様をアピールしていることもありますが、マットレスに詳しい人でない限り、イメージしづらいですよね。
結論から言うと、こうした細かな仕様はあまり気にしなくて良いと思います。
冒頭でお伝えしたとおり、マットレス作りはバランスです。要素をバラバラに分解してアピールしても大きな意味はありません。
しかし、仕様の理解を深めることで、マットレス選びに失敗しにくくなるのは確かなので、この記事では特にポイントとなる以下のキーワードについて解説します。
ポケットコイルの主な仕様
- 密度(コイル数)
- 配列
- 線材の種類(線種)
- 線径(バネの太さ)
- 巻き数
- コイル高
- 圧縮率
1. 密度(コイルの量)
ポケットコイルマットレスにおける密度とは「コイルの量」です。密度の違いを大雑把にまとめると以下のとおりです。
密度 | 意味合い |
---|---|
300個台 | 低密度(耐久性が不安&バネ当たりも感じやすいので避けた方が良い) |
400~600個台 | 中密度(バネの動きが出やすく寝返りサポート性が得られる) |
600~1,000個 | 高密度(線径が細く、コイル高も高くなるので、ふんわりとした寝心地) |
1,000個以上 | 超高密度(ジェル的で静かな寝心地・バネを感じにくい) |
基本的にポケットコイルマットレスは、密度が低いほどコイルひとつあたりにかかる負荷が高くなるため、特に300個レベルの低密度タイプは耐久性に支障が出る可能性も高くなります。
とはいえ高密度であるほど良いというわけではなく、耐久性としての適切な密度レベルは450個以上で、それ以上であれば耐久性に大きな差はなく、むしろ寝心地の差が生まれます。
超高密度(約1,200個/Sサイズ) | 中密度(465個/Sサイズ) |
---|---|
ジェル的なフィット感があり、特に静かな寝心地 | 適度にバネ感が発揮され、寝返りなどがしやすい寝心地 |
→耐久性としては同等レベル(高密度=耐久性が高いというわけではない) |
密度だけで考えると、
- 静かな寝心地が好きな人は、高密度以上
- 弾力がある寝心地が好きな人は、中密度程度
といった感じで選ぶのが良いと思います(ざっくり)。
超高密度タイプの場合、「一般のポケットコイルの○倍!」とアピールしている商品もありますが、コイル数の違いは、あくまで寝心地の方向性を決めるものなので、良し悪しではありません。
2. 配列
ポケットコイルの基本的な配列方法は「並行配列」か「交互配列」のどちらかです。
配列 | 並行配列 | 交互配列 |
---|---|---|
画像 | ||
硬さの傾向 | ソフト | ハード |
感触 | ふわっとしたクッション性 | ピタッとジェル的 |
特徴 | 弾力がある寝心地 | 静かな寝心地 |
価格 | 安価に作りやすい | 高価になりやすい |
配列の違いもそのマットレスがどのような寝心地を目指しているかで決められます。
ちなみに『並行配列の方が隙間が多いので、通気性が優れています』というアピールを見ることが多いですが、実用上は大きな差はありません。(むしろ、通気性は詰め物の仕様に大きく影響されます)
3. 線材(線種)
線材の種類(線種)によっても、寝心地や耐久性は変わります。
線種とは、スプリング(バネ)自体の仕様・品質を現す「記号(JIS規格)」のことです。
ポケットコイルのバネは主に硬鋼線(こうこうせん)と呼ばれる素材で作られ、その仕様はメーカーや商品によって差があります。
例えば上記のような「SWRH 72 B C」という表示は以下の通り解釈します。
表示例 | 分かること | 意味 |
---|---|---|
SWRH | 線材 | Steel Wire Rod Hard(=硬鋼線材)を使用 |
72 | 炭素含有量 | 数値が高いほど反発力が高い |
B | マンガン含有量 | AよりもBが多く、バネが折れにくくなる |
C | 引張強さ | A<B<Cの順で強度が高い |
大まかな目安としては以下のとおりです。
線種 | レベル | 代表メーカー |
---|---|---|
SWRH 72 B C くらい | 低価格帯 | 1~3万円くらいの安いメーカー |
SWRH 82 B C | JIS最高クラス | 源ベッド、ドリームベッド など |
SWRH 82 B C より上 | JIS最高以上の品質 | シモンズ など |
なお、硬鋼線材(SWRH)よりも厳しい規格のピアノ線材(SWRS)を使ったマットレスもあります。(ビーナスベッドやアンネルベッド など)
しかし、マットレスの耐久性や反発性は線種だけでは判断できません。たとえば、線種のレベルが低くても、高密度や高圧縮で作ったり、耐久性や反発性が高い詰め物を使うなどで、マットレス自体での評価はまるで変わってきます。
4. 線径(せんけい)
線径とは「バネの太さ」のことです。
線径は、太いほど反発力が高まり「しっかりとした寝心地」になります。逆に細いほど荷重に対して「しなやかに反応する」という特徴があります。
寝心地の目安としては以下のとおりです。
線径と寝心地(目安)
- 線径1.9mm以下:しなやかな寝心地
- 線径2.0mm以上:しっかりとした寝心地
しかし、上でご紹介した線種(SWRH 72 B C など)や配列・密度などによっても寝心地は変わってきます。
線径は太い・細いで良し悪しが分かれるものではありませんが、そのマットレスの特徴的な寝心地を知るために参考にはなるでしょう。
5. 巻き数
「巻き数」は、多くなるほど、荷重に対してなめらかに反応し、クッション性が高い寝心地になります。
一方、少ない場合は、コイルが潰れるときにテンションが強くかかることで、反発力を感じやすくなります。
多い巻き数 | 少ない巻き数 |
---|---|
クッション性が高い寝心地 | 反発力を感じやすい寝心地 |
よって、巻き数の違いも「優劣」ではなく「特徴」です。
大まかな目安としては以下のとおりです。
巻き数 | 特徴 | 硬さの傾向 |
---|---|---|
6巻き前後 | 反発力が強い | 硬め |
8巻き前後 | なめらかな寝心地 | ふつう程度 |
10巻き前後 | さらになめらかな寝心地 | やわらかめ |
高級なポケットコイルマットレスほど、巻き数が多くなる傾向があります。それは「高級ホテルのようなクッション性が豊かなふんわりとした寝心地」を目指して作られているからです。
また、巻き数が多いスプリングは、原料を多く使うので低価格帯のマットレスには採用されにくいこともひとつの理由です。
6. コイル高
コイル高とは「ポケットコイル自体の高さ(バネを圧縮させて不織布に入れたあとの高さ)」のことです。
コイル高は高ければ高いだけ、ふんわりと荷重を受け止め、体圧分散性が高くなります。
一方、コイル高が低すぎる(かつ、詰め物も少ない)薄型タイプのポケットコイルマットレスはクッション性が低く、底付きを感じやすくなります。
コイル高のクッション性(目安)
- 170mm以上:豊か
- 140~170mm:標準的
- 140mm以下:乏しい
コイル高は「高いほど良い」というわけではありませんが、ふかふかな寝心地が好きな人は、コイル高が高いマットレスの方が合いやすいと思います。
7. 圧縮率
ポケットコイルはバネを圧縮してポケット(不織布)に入れますが、その時の圧縮率が高いほど耐久性と反発力が高まります。
参考までに、1万円台クラスの低価格帯のポケットコイルマットレスは圧縮率10%台が多いですが、有名海外ブランドのシモンズは40%ほどです。
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低価格マットレスの傾向
繰り返しますが、ポケットコイルの仕様を個別に比較するのはあまり意味がありません。
しかし、1万円前後で買えるような激安のポケットコイルマットレスの場合は、仕様のアピール合戦をしていることも多いので、惑わされないようにご注意ください。
そこ(激安モデル同士)で競い合っているのは、特に「密度(コイル数)」が多いです。
『コイル数が多い方がなんとなく良いかな?』といった消費者の心理に対してアプローチした商品開発と言えるでしょう。
私はいくつもの激安価格帯のポケットコイルマットレスを体験・検証してきましたが、「コイル数偏重主義」のマットレスは、コイル数以外の要素(消費者にわかりにくい要素)をないがしろにしている商品が多いと感じます。
特に「圧縮率」などは顕著です。
圧縮率自体は目指したい寝心地にアプローチする目的であれば、どのような数値でも問題ありません。
ただし、激安マットレスにおいては、なるべく厚さを出すこと(=立派に見えること)を目的に、バネをギリギリまで引っ張って、ほとんど圧縮せずにポケットコイルにしていることが多いです。
低圧縮 | 高圧縮 |
---|---|
よって、『厚さ』や『コイル数』などが最大のアピールポイントとしている激安のマットレスはあまり積極的に選ばない方が無難だと思います。
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まとめ
いかがでしたか。
ポケットコイルの仕様(密度・線材・線径・圧縮率など)についてご紹介しました。
ポケットコイルマットレスは、ポケットコイルの様々な仕様を調節して寝心地を作ります。
ただし、「最高の仕様=最高の寝心地」というわけではありません。(そもそも「最高の仕様」「最高の寝心地」というのも決められるものではありませんね)
なお、ポケットコイルマットレスはコイル(クッション層)以外の、詰め物や側地(表地)などでも寝心地を調整します。
ポケットコイルマットレスはこれらの層によって寝心地を高めます。
よって、いくら高品質なバネを使っていたとしても、詰め物などが良くないとマットレスとしては早くダメになってしまいます。
繰り返しますが、マットレスはバランスが重要です。
マットレスをもっと知りたい人は、選び方全般と予算別のおすすめのマットレスを以下の記事でまとめているので、よろしければ参考にしてくださいね。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。