マットレスの「反発性」を徹底解説
この記事ではマットレス(主にウレタンマットレス)の反発性を知るうえで重要な指標「反発弾性率(はんぱつだんせいりつ)」について詳しくご紹介します。
反発弾性率の意味や定義などを知っておくことで、特に高反発系のマットレスを選ぶ際に失敗しにくいはずです。ご参考いただけますと幸いです。
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目次
反発弾性率とは?
反発弾性率とは、素材(主にウレタンフォーム)が持つ反発性を測る数値のこと。
反発弾性率を調べる方法として、JISが定めるテスト方法(JIS K 6400-3)があり、簡単に言うと「高さ50cmから鉄球を落として、反発した高さと割ったのが反発弾性率」ということです。
なお、JIS K 6400-3は主にウレタンフォームを対象とした試験のため、厳密にいえば高反発や低反発といった言葉はウレタンフォーム(ウレタンマットレス)に対して使うものです。
反発弾性率が意味するものは?
反発弾性率によって、以下のようにマットレス(ウレタンフォーム)が分類されます。
反発弾性率 | 分類 |
---|---|
15%未満 | 低反発 |
15~49% | 一般(レギュラー) |
50%以上 | 高反発(高弾性) |
以上のとおり、高反発と高弾性は同じ意味あいで、低反発でも高反発でもないふつうの反発性を持つ素材は「レギュラー(一般)」と呼びます。
低反発・レギュラー・高反発(高弾性)の違い
それぞれの反発性の違いは以下のとおりです。
低反発 | レギュラー(一般) | 高反発 | |
---|---|---|---|
画像 | |||
反発弾性率 | 15%未満 | 15~49% | 50%以上 |
特徴 | 衝撃吸収性が優れ、静かな寝心地が実現できる | ごくごく一般的なウレタンフォーム | グッと押し返す弾力性によって、寝姿勢が整い、寝返りしやすい |
なお、低反発・レギュラー・高反発は数値(反発弾性率)が異なるだけの同一素材ではなく、それぞれ原料の種類や配合も違う全くの別物です。
要するに、寝心地も全く異なるので注意しましょう。
1. 低反発の特徴
押して離すとゆっくり形状が戻る素材。体のラインにぴったりと沿ったフィット感があり、体圧分散性が最も高いタイプです。
形状安定性が高いので、寝姿勢も安定しやすいです。
なお「低反発」という言葉は造語で、正しくは「メモリーフォーム」と言います。メモリーフォームは「衝撃吸収性が高い素材」という意味です。よって、最も揺れにくいタイプの素材です。
2. レギュラー(一般)の特徴
ごくごく一般的なウレタンフォーム。
低反発のようなフィット感もなく、高反発のような押し上げる力もないため、悪く言うと味気ない寝心地です。
低価格で作れるため、1万円前後で買えるような格安マットレスに採用されることが多いです。
3. 高反発(高弾性)の特徴
押して離した瞬間に勢いよく形状が元に戻る素材。
沈み込んだらグッと押し上げる力があり、沈み込みすぎないことで寝姿勢が整いやすく、体の動きをサポートするため寝返りが打ちやすいことが特徴です。
「高反発=硬い」ではない
『低反発はやわらかい』『高反発は硬い』といったイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は、硬さと反発性は別の話です。
要するに「硬い低反発」もあれば、「やわらかい高反発」もあります。
むしろ高反発ほどやわらかい傾向があります。(硬すぎる素材では跳ね返りづらいため)
しかし、高反発の方が硬めに感じる
ただし、同等の硬さの仕様(ニュートン数)の場合、高反発の方が体感としては硬めに感じやすいでしょう。
なぜなら、マットレスに寝転んだ際には一瞬深く沈み込みますが、そこから元に戻る力(つまり反発性)が高い方が、体の重い部分と軽い部分にかかる圧力の差がハッキリするからです。
つまり、高反発の方が背中や臀部などの荷重が集中する場所に強めの反発力(圧力)を感じるため、硬め感じるということです。
「偽物の高反発」にご用心
「低反発・高反発・高弾性」という3つの種類があるというのが世間一般の認識でしょう。
ですが、すでにお伝えしたとおり、以下が正しい定義となります。
反発弾性率 | ×(間違い) | 〇(正解) |
---|---|---|
15%未満 | 低反発 | 低反発 |
15~49% | 高反発 ※ココ注意 | 一般(レギュラー) |
50%以上 | 高弾性 | 高反発(高弾性) |
実は、こうした認識のずれにより、一般(レギュラー)ウレタンを使ったマットレスを「高反発マットレス」として販売してしまっている例も少なくありません。
これは、「低反発(反発弾性率15%未満)でなければ、高反発と呼ぶ」といった誤った認識のもと、商品が開発されてしまっているからです。
上でもご紹介したとおり、低反発(メモリーフォーム)・一般(レギュラー)・高反発(高弾性)は、原料も製法も全く違う別物です。
なお、このように「偽物の高反発」が販売されてしまっている主な理由は以下の2点です。
- 高反発(高弾性)ウレタンと一般ウレタンの見分けがつきづらいこと
- バイヤー・MDの知識不足(高反発=硬いマットレスという誤った認識)をもとにした商品開発
メーカーのバイヤーさんとお話することも多いですが、実際に『このマットレスは高反発だから硬いです!』といった紹介を受けたこともありました。
メーカーでさえこうした認識があるので、一般消費者の方は混乱しますよね。
本物の高反発マットレスが欲しい人は、反発弾性率50%以上という数値を公開している商品を選びましょう。
ウレタンフォーム以外の反発性について
反発弾性率による反発性の区分け(低反発・一般・高反発)は、主にウレタンフォーム(ウレタンマットレス)を対象としたものです。
しかし、マットレスにはウレタン以外にも以下のような種類があります。
- スプリングコイル
- ファイバー
- ラテックス
- その他(ポリマー など)
以下では、ウレタンフォーム以外の素材における反発性の特徴についてご紹介します。
1. スプリングコイルの反発性は?
スプリングコイルは、硬鋼線(鉄線)のバネを使った素材のこと。
スプリングコイルには以下の3つの種類があります。
コイル種類 | ボンネルコイル | ポケットコイル | 高密度連続スプリング® |
---|---|---|---|
画像 | |||
タイプ | 連結コイル | 独立コイル | 連続コイル |
スプリングコイルは、バネ製なので、基本的に反発力は高めです。
ただし、スプリングコイルだけで出来たマットレスはなく(バネに直接寝ると痛いので)、コイル層の上に詰め物(ウレタンフォームや綿)を施して完成するため、詰め物によって寝心地が変わります。
よって、スプリングコイルマットレスで探している場合、詰め物の素材の特徴(低反発・高反発など)にも注目しましょう。
スプリングコイルマットレスの詰め物で使われているウレタンフォームはレギュラー(一般)タイプが中心です。
これは、いろいろな理由がありますが、寝心地に関して言うとスプリングコイルの特徴をしっかり感じてもらうためだと考えています。
2. ファイバー(樹脂)の反発性は?
ファイバーは、ポリエチレンやポリエステルを水の中で編み込んで固めた素材。(釣り糸を作る技術の応用です)
ファイバーといえば、エアウィーヴ®が有名ですね。
ファイバー素材は基本的に高反発です。
そして、3次元に繊維が絡み合っているため、多方向に反発するという点で寝返りのしやすさは抜群です。
ファイバー素材のデメリットは耐久性(復元率)の低さ。つまりヘタリやすいです。
一方、硬さの保持率は高く(硬さが変わりにくい)、通気性が良いことが魅力です。
3. ラテックスの反発性は?
天然のゴムの木の樹液を使った素材。ゴムなので反発性は高いです。
見た目はウレタンフォームに似ていますが、ゴムの特性を生かし、多方向への反発力が働くため、寝返りのしやすさは抜群です。
一方、ゴムのため振動が伝わりやすいことと、蒸れやすい(なので穴をあけている)ことがデメリットです。
近年は原料費高騰の影響からウレタンマットレスにシェアを多く奪われ、ラテックスの代名詞ともいえるセンベラ(ドイツ)のマットレスも販売終了するなど、選べる商品が少ないです。また、ゴムアレルギーがある人は使用できません。
4. ポリマーの反発性は?
最近少しずつ増えてきたのがポリマーを使ったマットレスです。
ポリマー素材は「超高弾性ポリマー(ハイパーエラスティックポリマー)」と呼ばれることもあるとおり、ゴムのような高い弾力が特徴で、高い反発性を持つ素材です。
なお、ウレタン等の化学物質を使った素材と違い、ポリマー素材は水(ジェル)を主成分とし、食器などにも利用されることがある安全性が高い素材です。
ポリマーはかなり重いため、100%ポリマーで出来たマットレスはほとんどありません。
つまり、詰め物(表層)に使われることが多い素材です。
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【ご紹介】当サイト独自の反発弾性率テスト
当サイトでは独自の反発弾性率テストを実施しています。
当サイトによる計測方法はJIS規格(JIS K 6400-3)に倣い、厚さ50 mm以上、幅100 mm以上及び長さ100 mm以上のウレタンフォームを取り出し、床(木製)の上に乗せて計測します。
アクリル板(天面がちょうど高さ500mm)で鉄球を支えます。
ゆっくりとアクリル板を外し、鉄球を落下させます。
測定器には300mmのスケール(定規)を設置しています。
測定風景を動画で記録し、画像ソフトで具体的な数値を確認します。
なお、JISでの測定条件に完璧に適合した方法ではないため、このテスト結果はあくまで参考値ですが、メーカー公表値と同様の数値が確認でき、また差がある場合でも±5mm程度の範囲に収まっているので、おおむね信頼できる数値だと思います。
すでにお伝えしたとおり、低反発・レギュラー・高反発は、原料や配合も異なる別素材のため、この試験はあくまで判別が目的です。(性能の優劣が主な目的ではありません)
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
マットレスの反発性の種類と、反発性を分類するための測定値「反発弾性率」をご紹介しました。
基本的に「低反発」や「高反発(高弾性)」といった言葉は、JIS規定の反発弾性率テスト(JIS K 6400-3)によって分類されます。
JIS K 6400-3は、ウレタンフォームの反発弾性率を測定するため、基本的に「低反発」や「高反発(高弾性)」という定義はウレタンマットレスで使用することが多いです。(スプリングコイルマットレスの詰め物に使われているウレタンフォームでも使用する場合があります)
しかしながら、この記事の中でもご紹介しているように、「低反発じゃないから高反発」といった誤った認識が広がっていることもあり、結果的に「偽物の高反発」として販売されているマットレスもよく見られます。(反発弾性率15~49%はレギュラーウレタンです)
本物の高反発マットレスが欲しい人は、しっかりと反発弾性率(50%以上)が明記しているマットレスを選びましょう。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。