マットレスの硬さ「N(ニュートン)」を徹底解説
この記事ではマットレスを選ぶときにチェックしておきたい「N(ニュートン)」という仕様についてご紹介しています。ご参考いただけますと幸いです。
この記事を書いた人
目次
N(ニュートン)とは?
N(ニュートン)とは、主にウレタンマットレス(ウレタンフォーム)の硬さを現す単位のこと。N数が大きいほど硬い寝心地になります。
N(ニュートン)はどうやって計測する?
ウレタンマットレスのニュートンはJIS規格(JIS K6400-2)で計測されます。
このJIS規格は簡単に言うと「試験片(厚さ50mm±2mm)のものを40%まで圧縮したときにかかる荷重を計測する」という内容です。
N(ニュートン)はあまり参考にならない?
結論から言うと、N数による硬さ表示はあまり参考にはなりません。
その理由は以下の通りです。
- 「品質表示ルール」が実際の硬さと乖離がある
- 「厚さの差」を考慮していない
- 「多層構造タイプ」の捉え方が難しい
- 「プロファイル加工タイプ」はもはや意味がない
- 「ゾーニング仕様」は場所によって硬さが変わる
- 「詰め物・カバー」を考慮していない
1. 「品質表示ルール」が実際の硬さと乖離がある
ウレタンマットレスの硬さ(N数)は、消費者庁が定める「家庭用品品質表示法」により表示義務がある項目です。
消費者庁が定めるウレタンマットレスの硬さの表示ルールは以下の通りです。
▼消費者庁による表示ルール | |
---|---|
区分 | 用語(表示名) |
110N以上 | かため |
75~110N | ふつう |
75N | やわらかめ |
しかしながら、実際は、110N程度はむしろ少しやわらかいくらいに感じます。
参考までに、いくつものマットレスをレビューしてきた当サイトの感覚でまとめるとN数による硬さは以下のとおりです。
▼Nの実際のかたさ(当サイト調べ) | |
---|---|
N数 | かたさ |
200N以上 | 硬め |
150N前後 | やや硬め |
120N前後 | ふつう |
80N前後 | やや柔らかめ |
50N以下 | 柔らかめ |
実際に、単層の高反発ウレタンマットレスの場合、150N前後の寝心地を「やや硬め」と表記しているメーカーが多い印象です。
2. 「厚さの差」を考慮していない
N(ニュートン)の計測方法は「厚さ50mm±2mmの試験片を40%まで圧縮したときにかかる荷重を計測する」という内容です。
しかし、マットレスは厚さで硬さの感じ方が変わり、単純に言えば、同じN(ニュートン)でも、分厚くなるほど、寝心地としてはやわらかく感じます。
これは、ウレタンフォームは圧縮するほど圧力によって硬く感じるためです。
要するに、厚さ50mm±2mm(試験片規定)のウレタンフォームよりも、200mmの厚さのウレタンフォームの方が、寝た時の圧縮率が低いため、試験片で導き出したN数よりもやわらかく感じるのです。
薄いウレタン | 分厚いウレタン |
---|---|
圧縮率が高い=硬く感じる | 圧縮率が低い=やわらかく感じる |
マットレスにはいろいろな厚さの商品がありますよね。
よって、同じN数でも厚さによって感じ方が変わる(薄いほど硬く、厚いほどやわらかく感じる)ことはご注意ください。
3. 「多層構造タイプ」の捉え方が難しい
最近のウレタンマットレスは、仕様(密度・反発弾性率・硬さ)が異なる複数のウレタンフォームを積層させた「多層構造タイプ」のことが多いです。
こうした多層構造の場合、各フォームのN数が表示されていたとしても、その層の厚さが異なるため「どこまで体が沈み込むか」によって感じる硬さが違います。
例えば、表層から50N・100N・150Nという硬さの仕様だったとしても、1層目が分厚い場合は、やわらかめ(50N)の寝心地になりますし、1層目が薄く2層目に沈み込みが到達する場合、ふつう(100N)程度の寝心地を感じることになります。
さらに、沈み込みの深さは体型や寝姿勢によって変わるので、人それぞれということになり、N数では硬さが推し量りづらいのです。
4. 「プロファイル加工」はもはやNの意味がない
プロファイル加工とは、表面を波状や凹凸などの立体加工をしたウレタンフォームのことです。
プロファイルウレタンは、表面の立体加工によって、点で体を支えることができ、平面のウレタンフォームに比べてふんわりとやわらかい感触になります。
要するに、プロファイルウレタンは(多層構造タイプと違って)基本的にウレタン自体の仕様を変えずに表面を立体形状にすることで、感触の違い(立体部分はやわらかく、下層フォームは仕様そのままの硬さ)を作っているのです。
よって、プロファイルウレタンは、表層(立体部分)と下層で感触が大きく異なるため、実態とかけ離れたN数になってしまうのです。
このような主旨は、愛知県の寝具メーカー「篠原化学」さんが運営する「快眠タイムズ」の記事(高反発マットレスのニュートン数をアテにしたらダメな理由)でも指摘されています。
5. 「ゾーニング仕様」は場所によって硬さが変わる
ゾーニングとは「部分的に硬さを変えている」仕様のことです。
ウレタンマットレスでよくあるゾーニングの方法は、ウレタンフォーム自体にスリットや空洞などを設けて、部分的に硬さと変えているパターンで、多層構造タイプのウレタンマットレスに多く採用されています。
スリット | 空洞 |
---|---|
基本的には「スリットの間隔が狭い」「空洞が大きい」ほど沈み込みやすくなり、結果的にその部分の寝心地がやわらかくなります。
ゾーニング仕様の場合、中央部分よりも端部分のスリットや空洞が大きくなることが多いです。
つまり、腰・おしり部分が沈み込みすぎないようにマットレスの中央部分を硬くするゾーニングをしているということです。
要するに、スリットや空洞の間隔・大きさによって、硬さを調節しているため、ウレタンフォームの「試験片としての硬さ」と「実際の硬さ」に乖離が生まれるということです(プロファイルウレタンと少し似た理由ですね)。
6. 「詰め物・カバー」を考慮していない
詰め物とはマットレスの芯材(ウレタンフォームやスプリングコイル)の上にあるものです。
詰め物の役割は、マットレスからかかる圧力(体圧)を分散すること。よって、詰め物にはやわらかい素材(綿やソフトウレタンフォーム)が中心的に搭載されます。
スプリングコイルマットレスではほぼ必ず詰め物が入っています。(バネだけのマットレスは体が痛くなるので)
ウレタンマットレスは詰め物を施さないこともありますが、商品によっては詰め物がある場合があり、そうした商品は芯材のウレタンフォームのN数よりも実際の寝心地がやわらかく感じやすいです。
また、カバーの「キルティング」によっても、感じる硬さが変わります。
基本的にはキルトが細かくなるほど、硬めの寝心地になります。
さらにキルトによるゾーニング(部分的に硬さを調節している)仕様のカバーもあったりします。
N(ニュートン)はウレタンフォームだけの硬さを表示するものですが、このように詰め物やカバーによって硬さを調節・ゾーニングしている商品もあるのです。
つまり、最終的な寝心地はウレタンフォーム以外(詰め物やカバー)によっても大きく影響されるということです。
以上が、ニュートン数がウレタンマットレスの硬さを知るうえで、あまり参考にならないという理由です。
硬さと反発性の違い
- 「高反発は硬い」
- 「低反発はやわらかい」
といった具合に「硬さ」と「反発性」を混合して捉えている人もいるのですが、厳密には硬さ(ニュートン)と反発性(反発弾性率)はまったく別ものです。
メーカーのバイヤーさんでも、この勘違いをしている人がいたりします。
硬さ(ニュートン)はマットレスの上から押す圧力の強さで、一方、反発性(反発弾性率)は、圧力に対して跳ね返る力の強さのことです。
硬さと反発性は似ているよう感じますがまったくの別物で、例えば低いN数(やわらかめ)でも、高反発(反発弾性率50%以上)のマットレスもあります。
別の言い方をすると、圧縮する力が同じ(例えば100N)でも、そこから荷重を離した際に元に戻る(跳ね返る)力が低反発と高反発では違います。
低反発はゆっくりと形状が戻り、高反発は一瞬で形状が戻ります。
低反発は「分散」、高反発は「反発」
反発性の違いは、圧力に対して主に分散方向に向かうか(低反発)、反発方向に向かうか(高反発)の違いとも言えます。
つまり、高反発よりも低反発の方が「体圧分散性」は高いです。なぜなら、低反発の方が体の重い部分と軽い部分にかかる圧力の差が少ない(=体圧分散性が高い)からです。
一方、当たり前ですが「反発力」という点では、高反発の方が高いです。よって、体の動きへのサポート力が高いので、高反発マットレスは寝返りのしやすさが抜群です。
高反発の方が「しっかり」とした寝心地
ただし、硬さ(ニュートン数)と反発性(反発弾性率)が別物とはいえ、高反発の方が体感としては硬めに感じやすいでしょう。
なぜなら、マットレスに寝転んだ際には一瞬深く沈み込みますが、そこから元に戻る力(つまり反発性)が高い方が、体の重い部分と軽い部分にかかる圧力の差がハッキリするからです。
つまり、高反発の方が背中や臀部などの荷重が集中する場所に強めの反発力(圧力)を感じるため、硬め感じるということです。
下の表は、低反発(反発弾性率10%)と高反発(同60%)の素材に対して、鉄球を落とす高さを変えたときの反発する鉄球の高さです。
鉄球を落とす高さ | 低反発(10%) | 高反発(60%) |
---|---|---|
50cm | 5cm | 30cm |
30cm | 3cm | 18cm |
10cm | 1cm | 6cm |
この条件の場合、同じ衝撃に対して、低反発は最大4cmの差ですが、高反発では24cmもの差になります。
この「鉄球を落とす高さ」を「体の荷重」に置き換えるとイメージしやすいと思います。
要するに鉄球を落とす位置が一番高い「50cm」は最もマットレスに衝撃がかかるため、体で考えた場合「背中やお尻」などの重い部位にあたり、逆に「10cm」は「脚や腕」などの軽い部位にあたります。
つまり、衝撃・荷重の強弱において、高反発の方が反応の差が大きくなり、特に体の重い部分(背中やお尻)は強い反発性を感じるため、結果的に「しっかりと支えらている」という寝心地を感じやすいのです。
こうした寝心地を人によっては「硬い」と表現される場合もありますが、正確に言えば高反発は「硬い」よりも「しっかりとした寝心地」という表現の方が合っています。
とはいえ、これもN数とのバランスで、例えば
- やわらかめの高反発(60N・反発弾性率50%)
- 硬めの低反発(200N・反発弾性率10%)
では、「硬めの低反発」の方が硬く感じるでしょう。
硬さはどう選んだら良い?
硬さ選びのコツは「体のライン」です。
マットレスに接地する体のラインが平坦な場合は硬めが合いやすく、ラインがハッキリしている場合はやわらかめが合いやすいです。
具体的な条件で言い換えると以下の通りです。
硬さ | 合いやすい条件 |
---|---|
硬め | 仰向き寝・男性的な体型 |
やわらかめ | 横向き寝・女性的な体型 |
体型については、男性よりも女性の方が体のラインにメリハリがあるので、深い沈み込みが必要です。そのためやわらかめのマットレスが合いやすいということです。
寝姿勢で考えるのがおすすめ
ただし、男性でも女性のように体のラインがハッキリしたタイプの人もいるので、なかなか体型での判断は難しいですね。
そのため、寝姿勢(仰向き・横向きのどちらか)で決めるのが良いでしょう。
仰向き | 横向き |
---|---|
→硬めが合いやすい | →やわらかめが合いやすい |
ちなみに、人は一晩でいろいろな寝姿勢を取りますが、自分が布団に入ったときに無意識に取る姿勢が仰向き・横向きのどちらかでお考え下さい。これは「入眠時に無意識に取る寝姿勢が一晩の60-70%を占める※」と言われているためです。※フランスベッド社の実験による
体重は「硬さ」ではなく「耐久性」
なお「体重によって硬さが決まる(重い場合は硬め・軽い場合はやわらかめ など)」とお考えの人もいるかもしれませんが、体重はどちらかというと耐久性に関係します。
体重が重い=荷重が重くマットレスにかかるため、低耐久の商品だとすぐにヘタリます。よって、体重が重い人はなるべく耐久性が高い(ウレタンフォームの場合は高密度の)マットレスを選びましょう。
高密度タイプのウレタンマットレスは価格が少し高くなりますが「耐久性が高い」という点ですべての人におすすめです!
【まとめ】結局、ニュートンってどう理解すればいいの?
N(ニュートン)による硬さ表示は、あくまで「あまり参考にならない参考」といった程度にお考え下さい。
たしかにウレタンフォーム自体の硬さがわかれば、大雑把な硬さ(200N以上なら硬い、50N以下ならやわらかいなど)がわかりますが、「少し硬い・少しやわらかい」などの微妙な硬さを理解するのは困難です。
また、上でご紹介したとおり、多層構造やプロファイル加工、詰め物やカバーの仕様によって、消費者庁が定める表示と実際に感じる寝心地に大きな乖離が生まれます。
そもそも「硬さ」自体、人それぞれで感じ方が異なるので、ニュートンという単位で理解させようということ自体ハードルが高すぎる試みとも言えるでしょう。
ニュートン数よりも、むしろメーカーによるメッセージの方が実態には近いと思います(「硬めに作りました」「やわらかめに作りました」など)。
ちなみに当サイトでは多くのマットレスの体験レビュー記事を作成していますが、そこで実際に体験したときに感じた「硬さ」についても評価しています。
そうした体験を元に以下の記事で、本当におすすめのマットレスをご紹介しています。
こちらの記事では(あくまで筆者の感覚ではあるのですが)「硬さ」についても表記しているので、ご参考いただけますと幸いです。※すべてのマットレスの体験をしているわけではなく、未体験の商品は仕様から硬さを想像して表記しています
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。