両面仕様と片面仕様

マットレスの裏側にも注目しましょう

この記事ではマットレスの「両面仕様」と「片面仕様」について、それぞれの特徴(メリット・デメリットなど)をご紹介します。

マットレスを探している人は、ぜひご参考くださいね。

この記事を書いた人

管理人の椚大輔椚 大輔(ベッド・マットレス専門家)
ベッドメーカーに勤務後、当サイトを開設。国内・海外メーカーへの取材を重ね、レビューしたベッド&マットレスは100商品を超える。2020年に株式会社悠デザインを設立し、ベッド関連に特化したサービスを展開。ベッド・マットレスの専門家としてTBS「ラヴィット!」、ビジネス誌「プレジデント」、楽天市場「マットレスの選び方」などの出演・監修も行う。

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両面仕様・片面仕様とは

片面仕様のマットレス

「両面仕様」「片面仕様」とは、マットレスの両面で寝られる(両面仕様)か、表面でしか寝られない(片面仕様)かの違いのことです。※ちなみに上の画像は「片面仕様」です(表面にしか詰め物がないため)

スプリングコイルマットレスの両面・片面

両面仕様片面仕様
両面仕様片面仕様

スプリングコイルマットレスの「両面仕様」は、裏面でも寝られるように詰め物が装備されています。

一方、「片面仕様」は、裏面には寝ることに適した詰め物ありません。

ノンコイルタイプ(ウレタンマットレスやファイバー)の両面・片面

両面仕様片面仕様
両面仕様(1層)

両面仕様(多層・線対称)

片面仕様

ノンコイルタイプの場合、「両面仕様」は基本的に芯材(ウレタンフォームやファイバーなど)が1層タイプ、もしくは線対称の構造をしています。

一方、「片面仕様」は、素材や形状が異なる多層構造となっています。

両面仕様・片面仕様の特徴(メリット・デメリット)

仕様両面仕様片面仕様
画像両面仕様片面仕様
メリット
  • 表裏のローテーションができる
  • 荷重分散性が高い
  • なめらかな寝心地
  • 価格が安い
  • 軽い
  • メリハリがある寝心地
デメリット
  • 重い
  • 価格が高い
  • マットレスがズレやすい
  • 表裏のローテーションができない
  • 芯材の負荷が高い

1. ローテーションについて

マットレスのローテーション

ローテーションとは、マットレスを回転させてヘタリをならす技のことです。

特にスプリングコイルマットレスは、芯材よりも詰め物(ウレタンフォームや綿など)が圧倒的に早くヘタります。

そこで、定期的にローテーションさせることで、ヘタリの偏りが少なくなるため、寝心地を維持しやすいのです。

マットレスのローテーションの方法
マットレスのローテーションの方法

どのマットレスでも「上下(頭・足)」のローテーション(回転)はできますが、両面仕様の場合は、「表と裏」のローテーションもできるため、よりヘタリにくいです。

なお、稀に上下のローテーションもできない(完全にローテーションNG)のマットレスもあるのでご注意ください。

完全にローテーションNGのマットレス
完全にローテーションNGのマットレス(2層目のスリット部分が対象でないため、上下のローテーションもできない)

ローテーションの頻度は、3ヵ月に1度くらいがおすすめです。ホテルでもマットレスをそのくらいの間隔でローテーションさせることが多いです。

ホテルのマットレスのローテーション
ホテルのマットレスのローテーション表示
専門家専門家

「表裏のローテーションができる」という点で、両面仕様の方が長く使いやすいです。

2. 荷重分散の違い

荷重分散

荷重分散とは、「マットレスにかかる荷重を分散すること」で、主に耐久性に関係します。

なお、よく聞く「体圧分散」は、「マットレスから体にかかる圧力を分散する」という意味なので、荷重分散と体圧分散は方向が逆とお考えください。

マットレスの断面と機能
「体圧分散」と「荷重分散」

荷重分散は、主に芯材(クッション層)以下の部分が担います。

荷重分散が十分でないと、マットレスの芯材に負荷がかかり、劣化や損傷の原因にもなります。

例えば、安物のポケットコイルマットレスの場合、バネを包んでいる不織布(ポケット)の品質が低く、コイル下(裏カバーなど)の仕様の悪さなども重なり、結果的に荷重分散性の不十分さによって、裏面からバネが飛び出てくる例もあります。

バネが飛び出る安物のポケットコイルマットレス
バネが飛び出る安物のポケットコイルマットレス

参考までに、ポケットコイルマットレスにおける両面・片面仕様の荷重分散性の違いは以下のとおりです。

両面仕様片面仕様
両面仕様の芯材の動き片面仕様の芯材の動き

上の2つは、「まったく同じ仕様」のポケットコイルとウレタンフォームを使ってテストしています。(なるべく同じ加減で荷重をかけています)

まず、両面仕様(左)は、裏面の詰め物でも荷重分散できるため、ポケットコイルに強い力がかかりにくいことがわかります。

一方、片面仕様(右)は、床からの強い圧力がかかるため、ポケットコイルの歪み(圧縮)が大きいことがわかるでしょう。

以上のことから、ポケットコイル(芯材)への負荷が明らかに違うため、両面仕様の方が長持ちしやすいのです。

具体的な動き方を知りたい人は以下の動画もご参考ください。(音声なし)

専門家専門家

詰め物がたくさん入った「ピロートップ(ボックストップ)」などの場合は、表面の詰め物層の荷重分散性が高いため、両面・片面による特徴は薄れます(よって、ピロートップマットレスの多くは片面仕様です)。

3. 寝心地にも影響あり

荷重分散性の違いから、芯材の動き方が変わるため、以下のような寝心地の傾向があります。

両面仕様片面仕様
  • なめらかな寝心地
  • 衝撃吸収性が高い
  • メリハリがある寝心地
  • 反発力が高い

両面仕様は、芯材にかかる荷重を、下層の詰め物でさらに分散するため、衝撃吸収性が高く、揺れにくい滑らかな寝心地になりやすいです。

両面仕様
両面仕様(ポケットコイルが荷重にそって沈み込む=衝撃吸収性が高い寝心地)

一方、片面仕様は、良くも悪くも芯材が主張しやすいため、たとえば、体の重い部分は硬く、軽い部分はやわらかく、といったメリハリがある寝心地に感じやすいです。

片面仕様
片面仕様(ポケットコイルが荷重に応じて圧縮する=反発力が高い寝心地)

また、「圧縮が大きい」という点で、片面仕様の方が反発力が高まりやすいため、寝返りをサポートする力などは強めに感じるでしょう。

専門家専門家

以上のとおり、両面仕様と片面仕様では、同じ詰め物でも、寝心地の方向性が変わるのです。

4. 価格と重量

両面仕様は、単純に詰め物が2倍必要ということから、重量が重く価格が高くなる傾向があります。

別の言い方をすると、激安マットレスは素材や仕様を削れるだけ削るので、マットレス裏側の詰め物がなく(削られて)、結果的に片面仕様になりがちです。

5. マットレスのズレやすさ

両面仕様は、キルティングの立体感によってベッドフレームとの接地面が少なくなることで、滑りやすいというデメリットを感じる場合があります。

立体感が高いキルティングのマットレス
立体感が高いキルティングの両面仕様のマットレス(フレームと接地面が少なくなるため、滑りやすくなる)

一方、片面仕様は、裏面カバーに滑り止めなども装備できるため、商品によっては、全然ズレないものもあったりします。

滑り止め
滑り止めがある片面仕様のマットレス
専門家専門家

ただし、ズレやすさ(滑りやすさ)は、商品によって変わります。

たとえば、両面仕様であっても、重量が重く、生地自体が滑りにくい場合はズレません。

一方、片面仕様であっても、重量が軽く、裏生地がツルツルしている場合はズレやすいです。

高級マットレスの場合は事情が異なる

高級マットレス

ここまでご紹介した両面・片面の話はあくまでスタンダードモデル(価格帯で言えば高くても20万円くらいまで)の内容ですが、20~30万円以上の高級マットレスになると話は別です。

基本的に、マットレスは高級になるほど、ピロートップやボックストップといった、極厚の詰め物層によって「ふんわり・ふかふか」な寝心地を作るモデルが中心です。

ボックストップ仕様
高級マットレスのボックストップ仕様(詰め物が独立した構造)※参考:フランスベッド「ホテルマットレス HEC-360 LUXURY」レビュー記事

ボックストップなどは基本的に片面仕様ですが、そこに使われる詰め物は高品質なものが多く、芯材(スプリングコイル等)も高品質で耐久性が高いので、片面仕様でも長期使用に耐えられます

また、ボックストップを両面仕様にできなくもないですが、マットレスが分厚くなりすぎたり、不安定さを感じる原因にもなるため、高級モデルではあえて片面仕様のことが多いのです。

専門家専門家

ちなみに、片面仕様に見えても、高級マットレスの場合は裏面でも寝られるモデルもあります。

たとえば、サータのライトブリーズシリーズはボックストップ仕様ですが、裏面でも最低限の詰め物が装備されているため、「蒸れやすい夏などはひっくり返して裏側で寝る」ということもできたりします。(要するに表と裏で寝心地が違う仕様です)

ウレタンマットレスの片面仕様はメリットもある

多層タイプのウレタンマットレスの芯材

片面・両面のメリット・デメリットがはっきりするのは、基本的にスプリングコイルマットレスにおいてです。

一方、ウレタンマットレスにおいては、片面仕様の方が良い場合もあったります。

なぜなら、ウレタンマットレスは素材が異なるウレタンフォームを積層することで、寝心地を高めていることが多いからです。

積層タイプ(多層構造)のウレタンマットレス
積層タイプ(多層構造)のウレタンマットレス

たとえば、

  • 1層目は体圧分散性を高める「やわらかめの低反発ウレタンフォーム」
  • 2層目は寝姿勢保持性を高める「反発力が強い高反発ウレタンフォーム」
  • 3層目は荷重分散性とハンドリングの良さを高める「スリットを入れた軽量なウレタンフォーム」

といったように各層で役割を明確化し、全体的な寝心地を高められることが、多層構造のウレタンマットレスの魅力です。

こうした多層構造を両面仕様にできなくもないですが、マットレスがかなり分厚く、重くなり、価格も高くなる(要するにオーバースペックになる)ため、両面仕様にするのは現実的ではないでしょう。

専門家専門家

なお、ウレタンフォームの耐久性は密度(D)に影響されますが、ウレタンマットレスで使われているウレタンフォームの密度は30D以上が中心です。

一方、スプリングコイルマットレスの詰め物で使われているウレタンフォームの密度は15~20D前後が中心なので、そもそもスプリングコイルマットレスのように頻繁にローテーションする必要がないとも言えます。

筆者の感覚だと、ローテーションはスプリングコイルは3か月に1回、ウレタンマットレスは半年に1回くらいで十分だと思います。

まとめ

マットレスの内部構造

いかがでしたか。

マットレスの両面仕様と片面仕様についてご紹介しました。

スプリングコイルマットレスのスタンダードモデルにおいては、両面仕様の方が耐久性として大きなメリットを得られます。

また、特にポケットコイルマットレスでは、両面仕様の方が「ポケットコイルらしい揺れにくい寝心地」が実現されやすいです。

一方、ウレタンマットレスや高級スプリングコイルマットレス(ボックストップ仕様)などでは、片面仕様をデメリットに感じる必要はありません。

ただし、スプリングコイルよりもウレタンフォームの方がヘタリ(形状劣化)や、硬さが変化(硬度劣化)しやすいです。(一般的にウレタンフォームは硬さ保持率が低い=やわらかくなりやすいという特徴があります)

よって、「長期間、同じような寝心地をキープできるか?」という課題に対しては、詰め物が多くない高品質な両面仕様のスプリングコイルマットレスが最も優れていると思います。

とはいえ、使っていくうちに体がゆっくりとマットレスに馴染んでくるため、多少ヘタっても、硬さが変わっても、あまり問題に感じないことも多いでしょう。

確かに言えることは、耐久性・寝心地を大事に考えたい人は、数千円レベルの激安マットレスには手を出さない方が無難ということです。(片面仕様が中心ですし、そもそも素材も良くないです)

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

専門家専門家

マットレスの選び方全般と、当サイトおすすめのマットレスは以下の記事で詳しくご紹介しているので、ご参考くださいね。