体圧分散性について

この記事では、マットレスの「体圧分散性」についてご紹介します。

体圧分散性は、体への圧迫感をやわらげる大切な要素ですが、実は「高いほど良い」というものではありません。

体圧分散性の高さを追求すると、沈み込みすぎて寝姿勢が崩れたり、寝返りがしにくくなったりすることもあります。

この記事では、体圧分散性に対するよくある誤解を整理しながら、マットレス選びで本当に見るべきポイントをわかりやすく解説します。

著者情報 椚大輔 椚 大輔(くぬぎ だいすけ) ベッド・マットレス専門家。ベッドメーカーに勤務後、当サイトを開設。国内・海外メーカーへの取材を重ね、100商品以上のレビューを続ける。専門家としてTBS「ラヴィット!」、ビジネス誌「プレジデント」、楽天市場「マットレスの選び方」などの出演・監修も行う。> プロフィールはこちら
※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

体圧分散とは?

体圧とは「マットレスから体にかかる圧力」のことです。そして、その圧力を分散させることを「体圧分散」と言います。

「体圧」と「体圧分散」の関係

「体圧」と「体圧分散」の関係

体圧分散性が高いマットレスは、マットレスからの圧力による痛みを感じにくいというメリットがあります。

なぜ、体圧分散が必要か?

体圧分散が必要な理由は「体圧が分散されていない状態」を想像するとわかりやすいです。

例えば、コンクリートの上に裸で寝てみるとしましょう。これはほぼ体圧分散されていない状態です。

体圧分散ができない状態

体圧分散ができない状態

体圧がうまく分散されないと、背中やお尻などに強い圧力がかかり、血流が悪くなったり、痛みを感じることがあります。これらの不快感を避けるために寝返りを打ちますが、圧力が強すぎると寝返りの回数が増え、睡眠の妨げになることもあります。

こうした背景があるため、『マットレスは体圧分散性の高さが大切!』とメーカーや販売店で強調されるようになりました。

結果的に、「体圧分散性の高いマットレス=良いマットレス」という印象を持つ人も多いのではないでしょうか。実は、これがマットレス選びにおける大きな誤解のひとつなのです。

「体圧分散性が高い=良いマットレス」ではない

マットレスを探していると、体圧分布図(下記)を使って、『赤い部分が少ない』『圧力が均一に分散されている方が良いマットレス』といった説明を見かけることがあると思います。

体圧分布図の例

体圧分布図の例(右の方が良いとされているが...)

たしかに、体圧分布図は視覚的に伝えるうえでわかりやすい表現です。

しかし、体圧分散性が高すぎると寝心地が逆に悪くなる傾向があります。その理由は次のとおりです。

体圧分散性は「硬さ」と関係が深い

体圧分散性に最も関係が深い要素が、マットレスの硬さです。

硬さと体圧分散性の関係

硬さと体圧分散性の関係 ※下(3)に行くにつれて体圧分散性は高くなる

以上のように体圧分散性が高すぎるマットレス(3. やわらかすぎるマットレス)は、圧迫感の少なさというメリットがある一方で、沈み込みすぎて、寝姿勢が崩れやすいです。

すると背骨のS字カーブ(生理湾曲)が歪み、背骨周りの筋肉が緊張したまま寝るため、体の痛みにつながります。

また、人間の体は敏感なところと鈍感なところがあり、感度の違いを無視して圧力を均等に分散しすぎると、かえって「なんとなく気持ち悪い」と感じることがあります。

マットレスはバランスが大事

マットレスの重要な性能

マットレスの重要な性能

マットレスには体圧分散性だけではなく、次のような性能も求められます。

役割 意味
寝姿勢保持性 自然な寝姿勢を保つ性能
体圧分散性 体への圧迫感をやわらげる性能
荷重分散性 体重をマットレス全体で受け止める性能
寝返りのしやすさ 体を動かしやすい反発性やサポート性
耐久性 沈み込みやヘタリにくさ

要するに、「体圧分散性の高さ」だけに注目するのではなく、

  • しっかり体を支えられている感じがするか(寝姿勢保持)
  • 底付き感や、急な硬さを感じないか(荷重分散性)
  • 体が動かしやすいか(寝返りの打ちやすさ)
  • すぐにヘタらない素材を使っているか(耐久性)

といった点を確認するのがおすすめです。

では、どんなマットレスを選べばよいか?

失敗しにくいのは「少し硬め」のマットレス

シルキーポケットレギュラー(ウール入り)の体験

マットレス選びで迷ったら、「自分が思うよりも少し硬め」を基準にするのがおすすめです。理由は、あとから調整しやすいからです。

マットレスが少し硬い(体圧分散性が足りない)と感じた場合は、敷きパッドやベッドパッド、マットレストッパーなどを重ねることで、寝心地をやわらかく調整し、体圧分散性を高めることができます。

一方で、やわらかいマットレスを、あとから硬くするのはかなり難しいです(別の言い方をすると「寝姿勢保持性を後から強化することは難しい」ということです)。

さらに、マットレスは使っていくうちに少しずつやわらかくなる傾向があります。

椚大輔
椚大輔
購入直後にぴったりすぎる硬さよりも、「自分が思うよりも少し硬め」くらいを選んだ方が、長期的に失敗しにくいと思います。

多くの人に合いやすいのは多層構造のマットレス

多層構造のマットレス

多層構造とは、硬さや反発性が異なる素材を重ねた構造のことです。

多層構造 単層構造
多層構造 単層構造

たとえば、表層はやわらかめにして体当たりをやさしくし、中間層や下層はしっかり支える構造にすることで、体圧分散性と寝姿勢保持性のバランスを取りやすくなります。

その結果、「体重が軽い人でも硬すぎず、体重が重い人でも沈み込みすぎない」といった、多くの人に合いやすい寝心地が作りやすいことが多層構造のメリットです。

椚大輔
椚大輔
人間工学では、こうした考えを「弾性の三層構造」と呼び、寝心地が良いマットレスを作るひとつのコンセプトとして提唱されています。

まとめ

以上、マットレスの体圧分散性についてご紹介しました。

体圧分散性の低い・高いは、基本的にマットレスの良し悪しを判断するものではありません。

たしかに、体圧分散性が低すぎると、体の一部に圧力が集中して痛みや不快感につながりますが、逆に、体圧分散性が高すぎると、体が沈み込みすぎて寝姿勢が崩れたり、寝返りがしにくくなったりすることがあります。

よって、体圧分散性の高さだけを求めるのではなく、バランスが良く、自分が心地よいと思うマットレスを選ぶことが大切です。

自分に合うマットレスがわからない場合は、自分が思うよりも少し硬めを選ぶことや、多層構造で作られたマットレスを選ぶと失敗は少ないと思います。

もし、販売ページなどで『こんなに体圧分散されます!』といったアピールを見ることがあったら、この記事の内容を思い出していただけると幸いです。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。