「詰め物」は硬さを調節し、体圧分散性を担う
この記事ではマットレスの構造のひとつ「詰め物」についてご紹介します。
マットレスは詰め物の質や量によって寝心地が大きく変わります(メーカーとしても詰め物で寝心地を調節していることが多いです)。
詰め物の特徴や使われている素材について理解を深めることで、マットレス選びがわかりやすいものになるでしょう。
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目次
詰め物とは?
マットレスの詰め物とは、ボンネルコイルやポケットコイル等のスプリング(クッション層)とカバー(側地)の間に詰めた素材のこと。詰め物に使われれる素材はウレタンフォームや羊毛などが多いです。
マットレスの構造は、大きくわけると以下の通りです。
マットレスの構造
- 表面の「側地(カバー)」
- ウレタンなどの「詰め物」
- コイルなどの「クッション層」
この中で、詰め物はマットレスのやわらかさ・硬さを主に調節し、体圧を分散する役割を担っています。
詰め物の役割
詰め物の主な役割は以下の通りです。
詰め物の役割
- 硬さ(やわらかさ)の調整
- 体圧分散
- 寝返りサポート
- 寝姿勢保持
1. 硬さを調整する
「ボンネルコイルだから硬い、ポケットコイルだから柔らかい」とよく見聞きしますが、実はそれでは説明としては不十分です。
なぜなら、寝心地の硬さを調節しているのは主に詰め物だからです。
クッション層であるスプリングコイルの硬さを変えずに、詰め物だけでハードタイプ・ソフトタイプを作り分けているマットレスもあります。
マットレスを選ぶとき、クッション部分(ポケットコイルやボンネルコイルなど)に着目をされる人が多いですが、マットレス選びは詰め物なども含めて全体で考えるべきなのです。
2. 体圧を分散させる
体圧分散(たいあつぶんさん)とは、「マットレスから体にかかる圧力を分散すること」で、体圧分散が不十分だと体が痛くなりやすいです。
マットレスの体圧分散性は、実はスプリング(クッション層)よりも詰め物部分が主に担っています。
やわらかい寝心地の方が体圧分散性は高いですが、やわらかすぎると寝姿勢は悪くなり、硬すぎると体が痛くなるので、適度な体圧分散性がある硬さが理想です。
3. 寝返りをサポートする
「低反発」や「高反発」とよばれる反発性(弾性)の特徴をもった素材も詰め物に使われます。
反発性は主に寝返りのしやすさや、フィット感に関係します。
反発性の違い
- 低反発(反発弾性率15%未満)
- 高反発(反発弾性率15%以上)
低反発・高反発の違いは「反発弾性率」によって決められ、反発弾性率が15%未満が低反発、15%以上が高反発と呼べます。
JISが定めるテスト方法を簡単に言うと「50cmの高さから鉄球を落としてその反発した高さと割る」という内容です。つまり、反発した高さが25cmだった場合、そのフォームの反発弾性率は50%(高反発)となります。
低反発フォームの特徴
押したらゆっくりと戻ってくる低い反発性を持つ素材。
「余計な寝返りを減らす」というコンセプトで作られていて、寝返りや体の動きによって睡眠を妨げられていると自覚がある人におすすめです。
フィット感が強いがあまりに、蒸れや暑さを感じやすいですが、「宙に浮いた寝心地」と称され、入眠時の心地よさは抜群です。
高反発フォームの特徴
押したら勢いよくと戻ってくる高い反発性を持つ素材。
「楽に寝返りが打てる」というコンセプトで作られていて、体の動きをサポートしてくれるような反発性があります。睡眠時の寝苦しさや暑苦しさを感じている人におすすめです。
高反発マットレス分野は最近では様々なメーカーが参入していて、正直、品質が良くない商品をつかまされる可能性もあるので選び方に注意が必要です。おすすめ高反発マットレスは以下でご紹介しています。
4. 寝姿勢を保持する
クッション層(スプリングコイル等)と近い位置に、かなり硬めの素材を詰め物に使っているマットレスもあります。
詰め物はやさしい体当たりを実現するため、表層近くでは綿やウレタンフォームなどのやわらかい素材を使うことが多く、沈み込んだときに寝姿勢を保持するため、あえて硬い層を設けていることもあるのです。
なお、この硬い層は「支持層」とも言われます。
上の画像はチップウレタンを支持層に使用したマットレスです。チップウレタンはいろいろな生産工程で発生するウレタンフォームの端材を接着剤を入れて押し固めた素材で、一般的なウレタンフォームに比べてヘタリに強いことが特徴です。
こうして支持層でしっかりと寝姿勢を整えて、下のクッション層(スプリングコイル等)で衝撃をふんわりと受け止めるというのが理想的なマットレスの構造です。
詰め物はヘタりやすい
詰め物でよく使われているウレタンフォームや綿(ワタ)などの素材は、クッション層で使われているスプリングコイル(硬鋼線など)に比べてヘタるのが早いです。
仕様で変わりますが、例えばコイルが30年くらいでヘタるとしたら詰め物は10年くらいでヘタってきます。つまり、この場合は10年くらいでマットレスの寝心地は変わってしまうということです。
よって、できるだけ同じ寝心地をキープしたいのであれば、詰め物にあまり頼らず、コイルで硬さ・やわらかさを調節しているマットレスのシリーズが良いでしょう。傑作マットレスとして有名な「シルキーポケット(日本ベッド)」などがその例です。
なお、有名マットレスメーカーのシモンズなどは詰め物をできるだけ薄くしてコイルで体圧分散をさせるという方向でマットレスを作っています。
睡眠の質はほぼマットレスで決まるので、予算が許すだけマットレスには投資することがおすすめです。
詰め物がヘタってきたら?
もし詰め物部分がヘタってきたらマットレストッパーや厚手のベッドパットを使えば、ある程度の体圧分散性や寝心地は改善できます。
「寝返りしやすくしたい」
「寝姿勢を優しくサポートしてほしい」
など、具体的に実現したい寝心地をイメージして、トッパーなどを選びましょう。
【有名メーカー】ユニークな詰め物 3選
有名メーカーの中では、一般的なウレタンフォームや羊毛のほかに、ユニークな詰め物を採用されているマットレスもあります。以下でその代表商品をご紹介します。
1. フランスベッド「クラウディア」
日本の老舗マットレスメーカー【フランスベッド】が女性向けマットレスとして開発したシリーズ。
「やわらかいけど反発性が高い」というコンセプトで作られいて、詰め物には3次元構造体の「ブレスエアー」を採用し、反発性を高めています。
ブレスエアーはポリエステルを網目状に固めた素材で、通気性も高く、寝汗を多くかく人にもおすすめです。
2. サータ「i series(アイシリーズ)」
世界的に有名なマットレスメーカー【サータ】を全米No1にしたと言われる傑作マットレスが「i series(アイシリーズ)」です。
特徴は詰め物にジェルメモリーフォームという特殊な低反発素材を使用し、反発性や復元率、温度依存性などを改善させました。
3. テンピュール
NASAが認めた衝撃吸収素材のテンピュール(ブランド名もテンピュール)を使ったマットレス。
テンピュールはいわゆる低反発ウレタンマットレスのひとつですが、超高密度で作られているため、耐久性が高いことも特長です。
一般的なウレタンマットレスは層構造をしていないことが多いですが、テンピュールはコンフォート層・サポート層・高耐久ベースといったスプリングマットレスのような層構造をしています。
詰め物としての役割はコンフォート層・サポート層です。
テンピュールではそれぞれの層の厚みの違いによってグレードがわかれます。
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いかがでしたでしょうか?
マットレスの詰め物についてご紹介させていただきました。
「おすすめのベッドやマットレスの選び方を知りたい」
と思った方は当サイトのトップページ『専門家がおすすめのベッド選びをご提案!』をご参考いただけると幸いです。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。